苦手なことは克服するな。「助けて」と言える人が最強のリーダーになれる理由【戦略的依存】

「自分の弱点をどう克服するか?」 これは多くのビジネスパーソンにとって永遠の課題です。

しかし、私(株式会社データシード代表の吉田)は「苦手なことは克服しなくていい」と思っています。

むしろ、弱みこそが他人とつながる最強の武器になる──。

今回は、自身の「落ちこぼれ」だった経験と、最新の産学連携ニュース(銀行×医療大学)を紐解きながら、これからの時代に求められる「戦略的依存」という思考法について解説します。

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真面目な人ほど「自分一人」で抱え込んでしまう

仕事をしていれば、「あ、これ自分には無理だ」「苦手だな」と感じる瞬間は誰にでもあると思います。私にもたくさんあります。

でも、真面目な人ほど、その苦手を「勉強して克服しなければ」「自分一人でなんとかしなければ」と抱え込んでしまっていないでしょうか?

かつての私もそうでした。

会社を経営していると、営業、マーケティング、財務などやることは山積みです。 統計がわからないなら徹夜で勉強し、財務がわからないなら専門書を読み漁る。「自分で全部理解しなければならない」と思い込んでいました。

しかし、最近つくづく思うのです。

「苦手なことは、無理に克服しなくていい。むしろ、それが得意な人に頭を下げて頼るほうが、結果として最強になれるのではないか?」と。

今日は、そんな「戦略的に他人に依存する」という生き方についてお話しします。

キャリアの出発点は「知識ゼロの落ちこぼれ」だった

なぜ私がそう思うようになったのか。実は、私のキャリアのスタートは「落ちこぼれ」でした。

新卒で製薬会社の「統計解析部」に配属されたのですが、当時の私は統計の知識がほぼゼロ。 周りの同期や先輩は、大学院で専門的に研究してきた「医療統計のプロ」ばかりです。

現場で飛び交う専門用語が全く理解できない。「やばい」と思って毎朝カフェで必死に勉強しましたが、インプットしても現場では全く使えない。 本気で人事部に「異動させてくれ」と言いに行こうか悩むほど、毎日逃げ出したい気持ちでいっぱいでした。

「インプット」を捨てて「翻訳」に活路を見出す

転機は、開き直って「インプット(勉強)」を捨てたことでした。 「自分には難しい理論の構築は無理だ」と認め、泥臭く手を動かすこと(シミュレーション)や、分かったことをブログでアウトプットすることに切り替えました。

すると、面白いことに気づいたんです。 「自分は天才的な解析はできないけれど、難しいことを普通の人にわかる言葉に翻訳すること(通訳)ならできるかもしれない」と。

私が今、Voicyやブログで発信しているのは、この時の挫折経験が原点です。「天才じゃない自分」を認めたからこそ、「翻訳家」としての今のキャリアがあります。

ニュースに学ぶ「弱み」を「強み」に変える方法

この「自分の弱みを認め、他者と組む」という考え方は、個人のキャリアだけでなく、大きなビジネスの現場でも起きています。

最近、三重県で非常に興味深いニュースがありました。 「鈴鹿医療科学大学(大学)」「株式会社MMM(医療コンサル)」、そして「三十三地域創生(地方銀行)」の3者が包括連携協定を結んだという事例です。

銀行ですら「プライド」を捨てて頼る時代

冷静に考えると、これはすごいことです。 あの銀行グループですら、「自分たちだけでは地域医療は救えない」と弱みを認めているわけですから。

  • 銀行の強み:お金、地域のネットワーク
  • 銀行の弱み:医療の専門知識がない
  • 大学の強み:医療の高度な専門知識
  • 大学の弱み:社会実装するためのお金やノウハウがない

お互いが「自分にはこのピースが足りない」と認め合い、「知恵を貸してください」「力を貸してください」と手を組んだ。だからこそ、地域全体を動かすような大きなプロジェクトが始まったのです。

これを私は「戦略的依存」と呼んでいます。

プライドを捨てて「弱み」をさらけ出すことが、結果として強固なチームを作るきっかけになった好例です。

「助けて」と言えることは、最強のリーダーシップ

データサイエンスの世界にいると痛感しますが、一人の人間ができることなんてたかが知れています。 医学に詳しい人、プログラミングが得意な人、ビジネスに強い人。これら全てを一人で完璧にこなすのは不可能です。

だから私は、起業してから一つのルールを決めています。 「自分の手持ちのカードだけで戦おうとしない」ということです。

自分に医学の知識がないなら、医学部の先生と組めばいい。 お金やネットワークがないなら、それを持っている銀行や企業と組めばいい。

欠けているピースは「恥」ではない

自分の能力が欠けていることを「恥」だと思わないでください。 それは、誰かと繋がるための「フック(接着面)」です。 凹んでいる部分があるからこそ、凸を持っている誰かとカチッと噛み合うことができる。

「ここができないから、助けて」 そう言えることは、能力不足ではなく、周りを巻き込んでプロジェクトを前に進めるための「最強のリーダーシップ」だと私は思います。

もし皆さんが今、何かに行き詰まっているなら、それは能力が足りないのではなく、単に「ピースが足りていないだけ」かもしれません。 無理に自分で埋めようとせず、周りを見渡して「そのピース、持ってますよね?」と声をかけてみてください。

そこから、あなただけの新しい「産学連携」ならぬ「人生連携」が始まるはずです。


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