「あなたは今日、スマホの画面を見ている時に、声を出して笑いましたか?」
唐突ですが、少し思い出してみてください。 通勤電車の中、休憩時間、あるいは寝る前のひととき。 私たちの生活は今や、SNSやYouTubeなどのデジタルメディアと切っても切り離せない関係にあります。
しかし、画面を見つめるその表情は、実は「真顔」になっていないでしょうか。 指先だけで次々と情報を消費し、気づけば時間が溶けている。そんな経験を持つ人は少なくないはずです。
世間では「スマホの見過ぎはメンタルヘルスに悪い」「デジタルデトックスをしよう」といった議論が盛んです。 一方で、仕事で疲れ切った夜に、推しの動画やお笑いチャンネルを見て救われた、という経験がある人もまた多いでしょう。
果たして、私たちはデジタルの海の中で、本当に幸せになれているのでしょうか? それとも、孤独を深めているだけなのでしょうか?
本記事では、株式会社データシード代表であり、医学統計の専門家でもある吉田が、「デジタル社会における”笑い”の価値」に白黒つけるべく始動した、国立大学との大規模な共同研究プロジェクト の全貌を公開します。 あわせて、これからのヘルスケアビジネスにおいて不可欠となる「見えない価値(QOL)をデータで証明する方法」についても解説します。
「病気が治れば幸せ」は本当か? 医療統計が挑む「主観」の数値化

薬の効果だけが「エビデンス」ではない
私の専門である医療統計の世界では、長らく「客観的な数値」が絶対的な正義とされてきました。 「新しい薬を飲んだら、がん細胞が縮小した」 「血圧の数値が有意に下がった」 これらは確かに重要な指標です。
しかし、現代の医療やヘルスケアのトレンドは、そこから大きく変化しています。 重視されるようになったのは、「QOL(Quality of Life:生活の質)」や「Well-being(主観的幸福感)」といった指標です。
極端な話、病気の数値は改善したけれど、薬の副作用で毎日が辛く、ベッドから起き上がれない状態だとしたら、それは本当に「良い治療」と言えるのでしょうか? 逆に、病気と付き合いながらも、毎日笑顔で過ごせ、人生に満足しているなら、その状態を医学的にどう評価すべきでしょうか?
「笑い」を科学的に測定する
ここで登場するのが、PRO(Patient-Reported Outcome:患者報告アウトカム)という概念です。 これは、「痛み」や「気分の落ち込み」、「幸福感」といった、患者さん自身の主観的な感覚を、科学的な尺度を用いて数値化し、統計的に解析する手法です。
「笑い」や「幸せ」といったフワッとしたものを、あえて数字に落とし込み、エビデンスにする。 これからのヘルスケアビジネスにおいて、勝負を分けるのはこの「主観的な価値を証明する力」です。
「なんとなく体に良さそうです」という定性的なアピールではなく、「このサービスを利用すると、統計的に有意に笑顔の頻度が増え、QOLスコアが向上する」と言い切れるかどうか。 この違いが、選ばれるサービスになるための分水嶺となります。
【共同研究】YouTubeを見るとQOLは上がるのか?

(引用:https://www.med.tohoku.ac.jp/6153/)
そんな「見えない価値の証明」に挑むべく、私たちはある壮大なプロジェクトを立ち上げました。 2026年1月、東北大学大学院医学系研究科、岡山のIT企業株式会社CotoIT、そして弊社株式会社データシードの3者による共同研究契約を締結し、研究を開始しました。
研究テーマ:SNS利用と「笑い」の相関関係
今回の研究テーマは、ズバリ「YouTubeなどのSNS利用と、笑いやQOL(生活の質)の関連の分析」です。
「YouTubeをよく見ている人は、そうでない人に比べて、日常生活で笑う頻度が高いのか?」 「SNSの使い方(視聴時間やコンテンツ)によって、幸福度にプラスの影響があるのか、それともマイナスなのか?」
これらを科学的に解明しようという試みです。 単に「SNSは楽しい」という話ではありません。性別、年齢、職業、経済状況といった様々な「交絡因子(結果に影響を与える他の要因)」を統計的に調整した上で、純粋なSNSの影響力をあぶり出します。
武器は「3万人のビッグデータ」
この研究の最大の特徴は、そのデータの規模と質にあります。 使用するのは、東北大学の田淵貴大准教授らが実施している「JACSIS(ジャクシス)/JASTIS(ジャスティス)研究」のデータです。
これは、日本の一般住民約3万人を対象とした大規模なインターネット調査プロジェクトであり、新型コロナウイルス感染症の影響や社会生活、健康状態に関する膨大なデータが蓄積されています。 単なるWEBアンケートではなく、学術的な厳密さを持って収集されたこのビッグデータを活用することで、日本の縮図とも言える精度の高い分析が可能になります。
「SNSは体に悪い」説に科学で切り込む
なぜ今、私たちは「笑い」と「デジタル」の関係を調べるのでしょうか。 それは、現代社会にはびこる「単純な二元論」に、新しい視点を提供したいからです。
デジタルデトックス論へのカウンター
「SNSは見ない方が幸せだ」 「デジタルデトックスこそが正義だ」 こうした言説は、確かに一理あります。しかし、デジタルを完全に断つことは、現代生活において現実的ではありません。
もし今回の研究で、「特定の使い手においては、YouTube視聴が主観的幸福感を高める」という結果が出ればどうでしょうか? それは、「SNSは悪だ」と決めつけるのではなく、「健康的なメディアとの付き合い方」という新しい解を提示することになります。
「疲れた時は、無理に運動するより、このジャンルの動画を見て笑った方がQOLが上がる」 そんな科学的な処方箋が出せるようになるかもしれません。
異色の3社連携が生む価値
今回のプロジェクトは、座組(チーム構成)も非常にユニークです。
- 東北大学:圧倒的なデータ基盤と、公衆衛生学の権威
- 株式会社CotoIT(岡山):デジタルサービス開発の知見
- 株式会社データシード(東京):研究デザインと統計解析の技術
場所も業種も異なる3者が、「笑いの価値を証明したい」という一つの問いで繋がりました。 CotoITさんが持つ「現場の肌感覚」を、データシードが「研究計画」に翻訳し、東北大学の「データ」で検証する。 この産学連携の化学反応こそが、社会実装可能なエビデンスを生み出す源泉です。
中小企業こそ、大学の「知」を借りろ
「なんとなく良さそう」からの脱却
今回の事例は、ヘルスケアやウェルビーイング領域でビジネスを展開するすべての企業にとって、一つのモデルケースになると考えています。
自社のサービスやプロダクトに対して、「これを使うと元気になります」「幸せになります」とアピールすることは簡単です。 しかし、そこに客観的な根拠がなければ、それはただの「個人の感想」で終わってしまいます。
そこで有効なのが、大学との共同研究です。 企業が単独で主張するのではなく、大学という第三者機関と連携し、科学的な手順(プロトコル)に則ってデータを分析する。 その結果得られた知見は、単なる宣伝文句を超えて、社会的な信頼(エビデンス)へと昇華します。
良い「問い」があれば、道は開ける
「大学との共同研究なんて、大企業の話でしょ?」 「コネクションもないし、費用も高そう」 そう思われている方も多いかもしれません。
しかし、今回の私たちのように、ベンチャーや中小企業であっても、アカデミアと連携することは十分に可能です。 大学側も、社会のリアルな課題や、ビジネス現場の知見を求めています。 必要なのは、莫大な資金よりも、「社会にとって意義のある、良い問い(仮説)」です。
「このアプリの効果を証明したい」 「この食品がメンタルヘルスに良いことを明らかにしたい」 その熱意と仮説さえあれば、扉は開かれます。 むしろ、意思決定の早い中小企業こそ、大学の知見を素早くビジネスに実装できるポテンシャルを持っています。
まとめ:見えない価値を「科学」する旅へ
YouTubeを見て笑うことは、時間の無駄なのか、それとも心の栄養なのか。 その答えを出すための挑戦はまだ始まったばかりです。
私たちはこの研究を通じて、デジタル社会におけるウェルビーイングのあり方を再定義したいと考えています。 そして、そのプロセスで得られた知見を、広く社会に還元していきます。
「笑い」「幸福感」「QOL」。 目には見えないけれど、人生において最も大切な価値。 それをデータで可視化し、証明する。 そんなエキサイティングな試みに、あなたも自社のビジネスを通じて挑戦してみませんか?
御社のサービスの「見えない価値」を証明しませんか?
「自社のヘルスケアサービスの医学的エビデンスを作りたい」 「開発したアプリが、ユーザーのQOL向上に寄与していることを証明したい」 「共同研究をしたいが、どこの大学の先生に相談すればいいかわからない」
そうお悩みの経営者様、R&D担当者様へ。 株式会社データシードでは、今回の事例のような「産学連携プロジェクトのプロデュース」を行っています。
私たちは、単なる大学とのマッチング業者ではありません。 代表の吉田自身が医学統計の研究者としてプロジェクトに入り、 「どのようなデータを取れば証明できるか(研究デザイン)」 「どの大学のどの研究室と組むのが最適か(マッチング)」 「得られたデータをどう解析し、論文やプレスリリースにするか(アウトプット)」 まで、トータルで伴走支援いたします。
- 医学的に正しい手順でエビデンスを構築したい
- 「なんとなく」の効果を、数字で語れる強みに変えたい
- アカデミアの信頼を借りて、ブランド力を高めたい
御社の熱い想い(仮説)を、私たちと一緒に「科学」しましょう。
まずは、「こんなことを証明したい」というアイデアベースのご相談からでも構いません。 下記のお問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。
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