「競合に勝つために、価格を下げよう」 「選ばれるために、納期を無理やり短縮しよう」 「なんでもやります、と言って仕事を安請け合いしてしまう」
ビジネスの現場や個人のキャリアにおいて、私たちは無意識のうちに「自分を安売り(ディスカウント)」してしまってはいないでしょうか?
物価高騰やインフレが続く現代において、身を削る「引き算」の努力は限界を迎えています。 今求められているのは、値下げではなく「価値の足し算」です。
今回は、お弁当チェーンの「ほっかほっか亭」と「大阪芸術大学」がタッグを組んだ、常識破りの産学連携ニュース を題材に、「自分を高く売るための生存戦略」について、データサイエンスと組織論の視点から徹底解説します。
(※本事例は他社様の取り組みを紹介するものであり、弊社の実績ではありません。素晴らしい取り組みのため、業界の動向としてご紹介させていただきます。)
なぜ私たちは「安売り」の沼にハマるのか?

無意識の「ディスカウント戦略」
仕事や人間関係で「選ばれたい」と思ったとき、多くの人はハードルを下げるという選択肢を取りがちです。
- 商品価格を下げる
- 自分の時給を下げる
- 自分の余暇時間を削って働く
これはいわゆる「ディスカウント(値引き)戦略」です。 デフレ経済が長かった日本では、これが「誠意」や「企業努力」として美徳とされてきました。
インフレ時代に「引き算」は自滅する
しかし、時代は変わりました。 原材料費が上がり、生活コストも上がっている今、自分自身のリソースを削る「引き算」のアプローチは、組織や個人を疲弊させるだけです。 削れば削るほど余裕がなくなり、パフォーマンスが落ち、さらに価値が下がるという「負のループ」に陥ってしまいます。
今必要なのは、痛みを伴う値引きではなく、「価格はそのままに、満足度を高める」という「足し算」の発想への転換です。
組織論とデータサイエンスから見る「増やす」の意味
医療統計における「N増し」とは
私の専門であるデータサイエンスや医療統計の世界には、「N(サンプルサイズ)を増やす」という基本概念があります。 データの信頼性を高めるために、調査対象の人数(N)を増やすことは非常に重要です。
しかし、ビジネスの組織論において、この「増やす」という意味を履き違えているケースが多々あります。 ただ単に、今いる社員と同じようなタイプの人材を数だけ増やしても、組織は重くなるだけで、化学反応は起きません。
「異質な要素」を足し算する
イノベーションに必要なのは、同質性の拡大ではなく、「異質な要素の結合」です。 産学連携の文脈で言えば、企業が学生に求めるべきは「安価な労働力(コストダウン要員)」ではありません。それは既存の延長線上にある発想です。
そうではなく、「企業が持つリソース」に、「学生が持つ爆発的なクリエイティビティや若者の感性」という異質な要素を足し算(あるいは掛け算)する。 これによって、単なるボリュームの拡大ではなく、全く新しい「価値」を生み出すこと。これこそが、正しい「N増し」のあり方なのです。
【事例分析】ほっかほっか亭×大阪芸大「学増し」の衝撃

この「足し算の戦略」を見事に体現し、ビジネス界で注目を集めているのが、今回のニュースです。 持ち帰り弁当チェーンの「ほっかほっか亭」と、「大阪芸術大学」による産学連携プロジェクトです。
「学割」ではなく「学増し(がくまし)」
通常、学生向けのキャンペーンといえば「学割」が相場です。50円引き、100円引きといった「値引き」のアプローチです。
しかし今回、彼らが打ち出したコンセプトは「学増し(がくまし)」。 その内容は極めてシンプルかつ強烈です。 「値段は下げない。その代わり、ご飯を超大盛りにする」。
学生のリアルな声から生まれた逆転の発想
この企画には、大阪芸術大学の学生17名が参加しています。 彼らが求めていたのは、数十円の小銭が浮くことではなく、「とにかくお腹いっぱい食べたい」「満腹になりたい」というリアルな体験価値でした。
企業側が勝手に想像する「学生はお金がないから安くしてあげよう」という発想ではなく、ユーザー(学生)自身の「安さより量が欲しい」という本音を、そのままサービス化したのです。
さらに、このプロジェクトの凄いところは、単なるアイデア出しに留まらず、ポスター制作、PR動画(アニメ、ドラマ、コントなど)のコンテンツ制作に至るまで、すべて学生たちのクリエイティビティで作られている点です。
なぜ「学増し」は三方良しの最強マーケティング戦略なのか?
この事例は、インフレ時代のマーケティングとして非常に理にかなっています。その理由を3つの視点から分解します。
1. 企業のメリット:利益率とブランドの死守
食材費が高騰する中、定価を下げる「値下げ」は企業にとって致命傷になりかねません。 しかし、「お米を増やす」というコストであれば、現金値引きをするよりも原価へのダメージは相対的に低く抑えられます。 さらに、「大盛り」という言葉のインパクトは、「50円引き」よりもポジティブな印象を与え、顧客満足度を大きく引き上げます。 安売り競争に巻き込まれず、ブランド価値を守りながら集客できる、非常に賢い戦略です。
2. ユーザー(学生)のメリット:圧倒的な「満腹体験」
Z世代や学生にとって、わずかな値引きよりも「うわ、こんなに入ってる!」という驚きや、「お腹がはちきれそうだ」という満腹感の方が、SNSでシェアしたくなる「体験価値」として高い場合があります。 「安く済ませた食事」ではなく、「満足した食事」としての記憶が残るのです。
3. クリエイター(学生)のメリット:実践的なアウトプット
参加した芸大生にとっては、自分の作ったポスターや動画が世の中に出るという、得難い実務経験になります。 これは単なるアルバイト(時間の切り売り)では得られない、キャリアへの「足し算」となります。
あなたのキャリアも「大盛り」で選ばれよう
フリーランス・会社員の生存戦略
この「学増し」の思考法は、私たち個人の仕事にもそのまま応用できます。
クライアントや上司から「コストを抑えてほしい」「安くしてほしい」と言われた時、安易に「わかりました、値下げします」と言っていませんか? それでは、あなたの価値は下がり続け、やがて疲弊してしまいます。
「プラスオン」で単価を守る
これからは、こう提案してみましょう。 「価格は下げられませんが、その代わり、これだけ”盛って”お返しします」
- 分析レポートを1本追加する:今のデータにもう一軸、専門的な分析を加える。
- アフターサポートを延長する:納品後の質問対応期間を通常より長く設ける。
- 関連資料をプレゼントする:過去の知見をまとめたマニュアルを特典として付ける。
自分を「安売り(ディスカウント)」するのではなく、相手が喜ぶ付加価値を「大盛り(プラスオン)」にする。 そうすることで、自分の単価(プライド)を守りつつ、相手の期待値を上回ることができます。
「学割思考」から「学増し思考」へ。 マインドセットを切り替えるだけで、あなたの市場価値は大きく変わるはずです。
まとめ:異質なものを混ぜ合わせ、新しい「ボリューム」を作れ
ほっかほっか亭と大阪芸術大学の事例が教えてくれるのは、「既存の価値観(値下げ)に囚われない強さ」です。
企業のリソースと、学生の感性。 ビジネスの論理と、アートの表現。 これら「異質なもの」を混ぜ合わせることで、単なる安売り競争から脱却し、誰も傷つかない新しい価値(大盛り)を生み出すことができました。
デフレマインドが染み付いた日本において、この「価値の転換」こそが、企業が生き残り、個人が輝くための最大のヒントになるのではないでしょうか。
自社のリソースに「学生のクリエイティビティ」を足し算しませんか?
「自社の商品、もっと若者にアピールしたいが方法がわからない」 「社内のアイデアが固定化してしまい、新しい切り口が見つからない」 「値下げ競争ではなく、付加価値で勝負できる商品を開発したい」
そうお考えの経営者様、担当者様へ。 株式会社データシードでは、今回の事例のような「産学連携プロジェクトのプロデュース」を行っています。
私たちは、単なる学生とのマッチング業者ではありません。 データサイエンスの視点から「どのようなターゲット(大学・学部)と組めば、御社の課題解決に繋がるか」を戦略的に設計し、企画から実行までを伴走支援いたします。
- 理系大学と組んで、技術的なエビデンス(根拠)を作りたい
- 芸術大学と組んで、斬新なデザインやプロモーションを仕掛けたい
- 学生のリアルな声を取り入れて、Z世代向けの商品を開発したい
御社のリソースに、アカデミアの知見や学生の感性を「足し算」することで、まだ見ぬ新しい価値を一緒に作りませんか?
まずは、「どのような課題感を持っているか」というご相談からでも構いません。 下記のお問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。

