「まだ1週間あるから大丈夫」 そう思って余裕を持っていたはずが、結局は前日に徹夜をしてギリギリで仕上げてしまった。
あるいは、「いつでもいいよ」と言われた仕事ほど、いつまで経っても手がつけられず、気づけば数ヶ月も塩漬けになってしまっていた。
あなたには、そんな経験がないでしょうか? 私たちは往々にして、自分の意志の弱さや計画性のなさを責めてしまいがちです。しかし、私は断言します。 「それは意志が弱いからではない。人間の脳の構造上、締め切りがないとクリエイティブになれないようになっているのだ」と。
今回は、AI研究の第一人者である東京大学・松尾豊教授の興味深い論文と、吉田自身が起業に至ったエピソードを紐解きながら、夢や目標を確実に「現実」に変えるための「日付の力」について深掘りします。
なぜ私たちは、いつも締め切りに追われるのか?

東大・松尾豊教授が2006年に出した「答え」
現在、AI(人工知能)研究やスタートアップ支援で日本を牽引する、東京大学大学院の松尾豊教授。彼がまだ30代前半だった2006年頃に発表した、ある論文が今、SNSなどで再注目されています。
そのタイトルは、『なぜ私たちはいつも締め切りに追われるのか』。
タイトルだけ見るとエッセイのように思えますが、中身は数理モデルを用いた非常に論理的な考察です。この論文の中で示された結論は、私たちの直感に反する衝撃的なものでした。
「創造的な仕事においては、時間のゆとり(バッファ)を与えても、成果の質は上がらない。むしろ、締め切り直前の集中力こそが成果を生む」
「時間がある」ことは、クリエイティブの敵である
ルーチンワーク(単純作業)であれば、時間をかければかけるほど処理量は増え、成果は上がります。 しかし、研究開発、企画書の作成、あるいは起業の準備といった「正解のないクリエイティブな仕事」の場合、話は別です。
時間をたっぷりと与えられると、人はどうなるでしょうか。 「もっと良くできるはずだ」「別の資料も探してみよう」と迷走を始めたり、あるいは「まだ時間があるから」と着手を先送りにしてしまったりします。その結果、貴重な時間というリソースを食いつぶし、アウトプットの質は向上しないのです。
松尾教授の論文は、「締め切りを設定し、自分を追い込むこと自体が、高度な知的生産技術である」と示唆しています。 つまり、締め切りに追われてヒイヒイ言っている状態は、能力不足なのではなく、脳が最もパフォーマンスを発揮している「最適解」の状態なのかもしれません。
「いつか」は永遠に来ない。夢を「予定」に変える方法

「やるやる詐欺」だった私が変わった瞬間
この「締め切りの効能」は、仕事のタスク管理だけでなく、人生の大きな決断においても全く同じことが言えます。
私(吉田)自身も、かつては典型的な「やるやる詐欺」でした。 「いつか起業したい」「いつか自分の会社を持ちたい」 そう漠然と考えてはいましたが、その「いつか」は待っていても永遠に来ませんでした。 「スキルが足りないから」「人脈ができてから」「資金が貯まってから」……そうやって自分に言い訳をして、具体的な行動を何一つ起こしていなかったのです。
しかし、ある日、流れが劇的に変わりました。 それは、何の実績も根拠もないまま、カレンダーに「日付」を書き込んだ瞬間でした。
「1年後の4月1日に起業する」
脳が勝手に「逆算」を始める
不思議なもので、日付(デッドライン)が決まった瞬間、脳のモードが切り替わりました。 「4月1日に会社を作るということは、3月には定款を作成しなければならない」 「ということは、2月までに今の仕事を整理しなければならない」 「1月には資金計画を固めなければならない」
それまで「いつか」という霧の中にあった夢が、具体的な「タスク」へと分解され、逆算思考が働き始めたのです。 この時、私はある真理に気づきました。
- 目標に日付がなければ、それはただの「夢」である。
- しかし、日付が入った瞬間に、それは「予定」になる。
夢を追いかける必要はありません。ただ、「予定」を淡々と消化していけばいい。 私が起業できたのは、特別な才能があったからではなく、単に「4月1日」という強力な締め切りを利用して、自分の退路を断ったからに過ぎないのです。
意志力を捨てる。「他者」という最強の締め切り装置

自分との約束は、簡単に破られる
とはいえ、「自分で決めた締め切りなんて、すぐに破ってしまう」という方も多いでしょう。 ダイエットを明日からやると決めても、翌日には食べてしまうのが人間です。 私自身、自分の「意志の力(ウィルパワー)」なんてこれっぽっちも信用していません。
では、どうすれば確実に締め切りを守り、行動し続けられるのでしょうか。 答えはシンプルです。 「他人を巻き込んだ、動かせない締め切り(マイルストーン)」を作ればいいのです。
「朝活ライブ」の強制力
例えば、私は「朝活ライブをやります」とSNSで公言することがあります。 自分一人で「朝6時に起きよう」と思っても二度寝してしまいますが、「朝7時からライブ配信します」と他者と約束してしまえば、起きざるを得ません。 視聴者が待っているのに寝坊するわけにはいかないからです。
これはビジネスや研究開発でも全く同じです。 社内で「いい製品ができたら発売しよう」と言っているうちは、いつまで経っても製品は完成しません。 しかし、「〇月〇日の展示会に出展する」「〇〇先生と共同でプレスリリースを出す」と決めてしまえば、嫌でもそこに向けて準備が進みます。
自分の意志ではなく、「仕組み」と「他者の目」を信用する。 これが、ビジネスパーソンに必要な生存戦略です。
ビジネスにおける「産学連携」というデッドライン
研究開発が終わらない理由
私の専門である「産学連携」や「データ分析」の現場でも、この締め切り問題は頻発します。 企業と大学が共同研究を行う際、プロジェクトが頓挫したり、延々と引き伸ばされたりする最大の原因をご存知でしょうか?
それは、「具体的なゴールの日付」を決めていないことです。 「いいデータが出たら論文にしましょう」 この言葉は、研究の世界では「永遠に論文を書かない」と同義です。
研究というものは、深掘りしようと思えばどこまでも深く行けてしまいます。 だからこそ、「〇月の学会で発表する」「〇月までに特許を出願する」という強制的な区切り(日付)がない限り、成果物が世に出ることはありません。
外部パートナーを「ペースメーカー」にする
逆説的ですが、社内のリソースだけで新規事業やR&Dを進めようとすると、どうしても「甘え」が出ます。 「今月は忙しいから来月に回そう」という判断がまかり通ってしまうからです。
しかし、ここに「大学」や「外部の研究機関」というパートナーが入るとどうなるでしょうか。 定期的なミーティングの日程が決まり、大学側からの進捗確認が入ります。 「先生との定例会までに、このデータを揃えなければならない」 このプレッシャーこそが、停滞しがちなプロジェクトを前に進める強力なエンジンとなるのです。
産学連携とは、単に大学の知見(技術)を借りるだけではありません。 外部の人間を巻き込むことで、プロジェクトに「健全な締め切り」と「不可逆な推進力」を実装する仕組みでもあるのです。
まとめ:カレンダーを開き、未来を「予約」しよう
松尾教授の論文が示すように、締め切りがない環境では、私たちは最高のパフォーマンスを発揮できません。 そして私の体験が示すように、日付のない目標は、いつまで経っても夢のままです。
もしあなたが今、「やりたいことはあるけれど進んでいない」と感じているなら。 あるいは、「社内の新規プロジェクトが停滞している」と悩んでいるなら。
まずはカレンダーを開いてください。 そして、根拠がなくてもいいので、勇気を持って「完了の日付」を入れてみてください。 その瞬間から、脳は解決策を探し始め、夢は「予定」へと変わります。
そして、その予定を絶対に守るために、私たちのような「外部パートナー」を巻き込んでください。 自分一人で戦う必要はありません。仕組みと他人をうまく使って、理想の未来を「予約」してしまいましょう。
その「いつか」を、私たちと一緒に「予定」に変えませんか?
「社内にデータはあるが、活用する時間がなくて塩漬けになっている」 「新規事業のアイデアはあるが、開発のきっかけ(締め切り)が作れない」 「大学と連携して、アカデミックな裏付けのある商品を開発したい」
そうお考えの経営者様、担当者様へ。 株式会社データシードは、ビジネスとアカデミアをつなぐ「翻訳家」として、御社のプロジェクトに伴走します。
私たちは単なるコンサルティングではありません。 大学の研究室とのマッチングから、共同研究のスケジュール管理、論文執筆のサポートまで、プロジェクトを確実にゴール(学会発表・製品化)へと導くための「ペースメーカー」としての役割を果たします。
「いつかやろう」を「〇月〇日にリリースする」に変える。 その最初の一歩として、まずは私たちとお話ししませんか? 「どのような課題があるか」というざっくりとしたご相談からでも構いません。 下記のお問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。

