自分の「強み」は自分では見えない。“遠距離”産学連携が教える「価値再発見」の法則

「自分の強みがわかりません」 「ウチの商品は、どこにでもある普通のモノですから」

就職活動中の学生だけでなく、企業の経営者やベテランの研究者であっても、自身の「本当の価値」を言語化できずに悩んでいる人は少なくありません。 なぜ、私たちは自分のことになると、途端に盲目になってしまうのでしょうか?

それは、あまりにもその環境が「当たり前」になりすぎているからです。 水の中にいる魚が「水」を認識できないように、私たちは日常というフィルターを通してしか自分を見ることができません。

そのため、自分の本当の価値は、自分一人では見つけられない。だからこそ、遠くの他人(メンター)が必要だと感じています。

今回は、長野県の信州大学と、鹿児島県の奄美大島という、物理的にも文化的にも離れた二者が手を組んだ驚きの産学連携ニュース を紐解きながら、埋もれた価値を掘り起こすための「外部視点の重要性」について徹底解説します。

(※本事例は他社様の取り組みを紹介するものであり、弊社の実績ではありません。素晴らしい取り組みのため、業界の動向としてご紹介させていただきます。)


目次

なぜ「コーチング」が必要なのか? 自己客観視の限界

人は自分の鏡にはなれない

近年、ビジネスの世界では「コーチング」や「メンタリング」が一般的になりつつあります。経営者やトップアスリートだけでなく、一般のマネージャークラスでも外部のコーチをつけるケースが増えています。 なぜ、わざわざ高いお金を払って、他人からフィードバックをもらうのでしょうか?

その最大の理由は、「人間は自分のことを客観視するのが一番苦手だから」です。 物理的に自分の顔を直接見ることができないように、自分の思考の癖や、持っているスキルの希少性も、他人の目という「鏡」を通さないと正確には把握できません。

「当たり前」という病

例えば、あなたが毎日当たり前のようにこなしている事務作業があったとします。あなたにとっては「誰でもできる退屈な作業」かもしれません。 しかし、全く違う業界の人から見れば、「そんなスピードで正確に処理できるなんて神業だ!」「その整理術は商品になる!」と驚かれることがあります。

自分にとっての「日常」は、他人にとっての「非日常(価値)」かもしれない。 しかし、自分一人で内省している限り、その価値に気づくことは永遠にありません。だからこそ、私たちは意識的に外部の視点を取り入れる必要があるのです。


研究者すら陥る「価値の過小評価」

「僕の研究なんて地味ですから」

私の専門であるデータサイエンスやアカデミアの世界でも、この「自己評価のズレ」は頻繁に起こります。

私は仕事柄、多くの研究者の相談に乗る機会がありますが、非常に優秀な先生でも自信を喪失していることがあります。 「僕の研究なんて地味で、大したデータも出ていないんですよ」 そう言って見せてくれたデータを解析してみると、私のような外部の人間からすれば「宝の山」に見えることが多々あるのです。

「先生、このデータ、別の角度から見たら社会的にものすごいインパクトがありますよ!」 そう伝えると、本人はきょとんとします。

価値は「素材」ではなく「解釈」で決まる

なぜ、当事者は気づけないのでしょうか。それは、その研究テーマに没頭しすぎているあまり、視野が狭くなっているからです。 彼らにとってそのデータは、毎日見ている「単なる数値の羅列」に過ぎません。

しかし、データサイエンティストや異分野の専門家という「メンター」の視点が入ることで、そのデータは「社会的なエビデンス」へと翻訳(可視化)されます。

医療統計も同じです。 現場の医師が「経験と勘」で行っている素晴らしい治療も、それだけではただの「個人の感想」です。しかし、統計家が入り、データを分析し、数値を可視化することで、世界中で通用する「医学的根拠」に変わります。 価値というのは、素材そのものにあるのではなく、「素材をどう解釈し、どう光を当てるか」によって決まるのです。


【事例分析】信州大学×奄美「AMAMI CRAFTASTE PROJECT」

この「外部の視点が、地元の価値を再発見する」という構図が見事にハマった事例が、2024年末に発表されました。 信州大学(長野県)と、奄美大島(鹿児島県)による産学連携プロジェクト、「AMAMI CRAFTASTE PROJECT(アマミ・クラフテイスト・プロジェクト)」です。

山と海。異色の「遠距離」コラボ

まず注目すべきは、その「距離」です。 日本アルプスに囲まれた山国の「信州」と、南国の海に囲まれた島国の「奄美」。 普通、産学連携といえば「地元の企業×地元の大学」が定石です。なぜ、わざわざこんな遠く離れた大学と組んだのでしょうか?

ここに、今回のテーマである「遠くのメンター」の重要性が隠されています。

「黒糖焼酎」を科学的にハックする

このプロジェクトが発表したのは、奄美特産の「黒糖焼酎」と「島産フルーツ」を使った「新感覚クラフトリキュールキット」です。 Makuake(マクアケ)での先行販売も開始されました 。

奄美の人々にとって、黒糖焼酎はあまりにも日常的な存在です。 「お酒といえば黒糖焼酎」という環境で育てば、その独特の香りや味わいの深さを「特別なもの」として認識するのは難しいかもしれません。

そこに、信州大学という「完全なるよそ者」が入ってきました。 信州大学の研究チームは、おそらく最新の分析機器を駆使して、黒糖焼酎やフルーツの成分を徹底的に分析したと考えられます。

  • 「この香りの成分数値は、他の焼酎にはない特徴だ」
  • 「このフルーツの酸味は、焼酎のこの成分と合わせると化学反応を起こして旨味に変わる」

このように、地元の人が感覚的に捉えていた魅力を、科学の力で「可視化(Visualization)」し、言語化したのです。

地域版の「コーチング」としての産学連携

これはまさに、地域に対する「コーチング」です。 地元の人が「当たり前」として見過ごしていた資産を、外部のメンター(大学)が客観的に分析し、「あなたのここの部分、世界レベルですごいですよ」とフィードバックする。

その結果、単なる「地酒」だったものが、「科学的に裏付けされたクラフトリキュール体験」という新しい価値をまとって生まれ変わりました。 産学連携の本質は、単なる技術提供やR&D(研究開発)ではありません。 外部の知性を取り入れることによる、「自社の強みの再定義・再発見機能」にあるのです。


イノベーションは「遠く」からやってくる

「近くの他人」より「遠くの他人」

この事例から学べるもう一つの重要な教訓は、「イノベーションを起こすなら、遠くの相手と組め」ということです。

ビジネスにおいて、私たちはつい「話しやすい相手」「物理的に近い相手」「同じ業界の人」とばかり付き合ってしまいます。 しかし、似た者同士が集まっても、出てくるアイデアは「想定の範囲内」です。

イノベーション理論(新結合)においても、「知と知の距離が遠ければ遠いほど、ユニークなアイデアが生まれる」と言われています。 山(信州)と海(奄美)。 研究室(アカデミア)と酒造(伝統産業)。 この「距離」があったからこそ、お互いの視点が新鮮に映り、「なんだこれは!」という驚きと共に新しい価値が発見されたのです。

あなたには「メンター」がいますか?

これは個人のキャリア戦略にも応用できます。 もしあなたが今、仕事に行き詰まっていたり、自分の強みがわからなくなっていたりするなら、「付き合う相手」をガラッと変えてみてください

  • 会社の同僚ではなく、全く違う趣味のコミュニティの人と話す。
  • 同業者ではなく、異業種の友人に仕事の悩みを相談する。
  • もし可能なら、利害関係のないプロのメンターやコーチをつける。

「私のやっていること、どう思いますか?」と聞いてみてください。 きっと、「え、そこが面白いんですか?」「それ、もっと発信したほうがいいですよ!」という意外なフィードバックが返ってくるはずです。 その言葉の中にこそ、あなたの次のキャリアのヒント(生存戦略)が隠されています。


まとめ:価値の再発見は、生存戦略である

信州大学と奄美大島の事例は、私たちに「視点の転換」を迫ります。 「新しいスキルを身につけなきゃ」と焦る前に、まずは「今ある自分」を正しく評価してくれる鏡(メンター)を見つけること。

自分の価値は、自分では見えません。 しかし、適切なパートナーと組めば、あなたの「当たり前」は、誰かにとっての「宝物」に変わる可能性があります。

2025年、あなたは誰を「鏡」にして、自分の価値を再発見しますか? まずは自分の殻を破り、外の世界にフィードバックを求めることから始めてみましょう。


あなたの会社に眠る「データ」や「技術」を、再発見しませんか?

「自社の技術に自信はあるが、新しい市場が見つからない」 「長年蓄積したデータがあるが、活用の仕方がわからない」 「社内の常識にとらわれない、新しい視点が欲しい」

そうお考えの経営者様、担当者様へ。 株式会社データシードは、ビジネスとアカデミアをつなぐ「翻訳家」として、貴社の価値を再発見するお手伝いをしています。

私たちは、単なるマッチング業者ではありません。 データサイエンスと医学統計のバックグラウンドを持つプロフェッショナルとして、御社の現状を客観的に分析し、「どの大学の、どの研究室と組めば、御社の強みが最大化されるか」を戦略的にご提案します。

信州大学が奄美の焼酎を「可視化」したように、私たちも御社の埋もれた価値を「エビデンス」として社会に証明します。 社内のリソースだけで悩む必要はありません。外部の「知」を取り入れ、共に新しいビジネスチャンスを創り出しましょう。

まずは、「どのような課題感を持っているか」というご相談からでも構いません。 下記のお問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。

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