「良かれと思ってやったのに、相手には全然響かなかった」 「部下のために飲み会を企画したのに、逆に負担だと思われてしまった」
ビジネスや私生活において、このような「ボタンの掛け違い」を経験したことはありませんか?
自分にとっての「心地よさ」が、相手にとっても同じ「心地よさ」であるとは限りません。特に、世代や立場が異なれば、その感覚のズレは致命的なものになります。
今回取り上げるのは、あの「コメダ珈琲店」が、自社の成功法則をあえて疑い、大学生と手を組んで行ったある実験的なプロジェクトについてです。
「医療統計におけるQoL(生活の質)」の視点と、最新の「産学連携ニュース」を掛け合わせ、これからの時代に求められる「感覚の社会実装」とリーダーシップについて解説します。
(※本事例は他社様の取り組みを紹介するものであり、弊社の実績ではありません。素晴らしい取り組みのため、業界の動向としてご紹介させていただきます。)
あなたの「正解」は、相手にとって「迷惑」かもしれない

「良かれと思って」のバイアス
私たちは無意識のうちに、「自分の感覚」を「世の中の正解」だと錯覚して生きています。 例えば、上司が「チームの結束を深めるには飲み会が一番だ(=快)」と思って企画しても、Z世代の部下にとっては「拘束時間が長い残業(=不快)」と捉えられることがあります。
この認識のズレは、なぜ起きるのでしょうか? それは、私たちが「自分自身の成功体験」や「過去の常識」というバイアス(色眼鏡)を通してしか、世界を見ることができないからです。
特に「くつろぎ」「癒やし」「働きやすさ」といった、数値化しにくい主観的な価値において、このズレは顕著に現れます。この「感覚のズレ」を放置したまま商品開発や組織運営を行うことは、ビジネスにおいて非常に高いリスクを伴います。
医療統計が教える「提供者」と「受け手」の決定的な乖離
QoL(Quality of Life)という指標
私の専門である医療統計の世界には、この問題を考える上で非常に重要な指標があります。それが「QoL(Quality of Life:生活の質)」です。
通常、治療の効果は「検査数値」などの客観的データで測ります。しかし、それだけでは見えないものがあります。 例えば、医師が「検査数値が改善したから、治療は成功だ」と判断しても、患者本人が「副作用で体がだるくて辛い」と感じていれば、その患者さんにとってのQoLは低いままです。
ここで重要なのは、「価値を決めるのは常に『受け手(ユーザー)』である」という大原則です。 提供者側(医師や企業)がどれだけ「良いものを提供した」と自負しても、受け手が「辛い」「不要だ」と感じれば、それが正解なのです。
コメダの「成功法則」は若者に通じるか?
これをビジネスに置き換えてみましょう。 「コメダ珈琲店」といえば、誰もが思い浮かべる「くつろぎのスタイル」があります。 「赤いベロアのふかふかソファ」に座り、「新聞や雑誌」を読みながらコーヒーを飲む。これこそがコメダの勝ちパターンであり、長年愛されてきた理由です。
しかし、組織が大きくなり、成功体験が積み重なるほど、この型は「絶対的なマニュアル」として固定化されてしまいます。 「コメダのくつろぎとは、赤いソファのことだ」と。
でも、一度立ち止まって考えてみてください。 スマホネイティブであるZ世代の大学生にとって、そのスタイルは本当に「くつろぎ」なのでしょうか? もしかしたら、彼らにとっての癒やしは、新聞ではなく「高速で安定したWi-Fi」かもしれないし、開放的なソファ席よりも「一人で没入できる個室」かもしれません。
ベテラン社員たちが会議室に集まって「若者のくつろぎとは何か?」を議論しても、答えが出るはずがありません。なぜなら、彼らは若者ではないからです。 ここで必要になるのが、当事者を開発プロセスに巻き込む「共創」のアプローチです。
【事例分析】コメダ×名城大学が挑む「感覚の実装」

この「提供者」と「受け手」のズレを解消する見事な事例が、先日発表されました。 コメダ珈琲店と名城大学による産学連携プロジェクトです。
学生が創る「次世代のくつろぎ空間」
2024年12月23日、名城大学の天白キャンパス内に、新しいコメダ珈琲店がオープンします。 単なる学内出店ではありません。この店舗のコンセプトは「学生が創る、次世代のくつろぎ空間」。
店舗のデザイン、内装、座席の配置に至るまで、名城大学の学生たちがプロジェクトに参加し、「自分たちが本当に使いたい場所とは何か?」を突き詰めて開発されました。
なぜ「産学連携」なのか? 3つの合理的理由
私はこの産学連携プロジェクトを、単なるCSR(社会貢献)ではなく、極めて合理的なマーケティング戦略だと捉えています。その理由は3つあります。
- ターゲットが目の前にいる キャンパス内への出店であるため、顧客のほぼ100%がターゲットである学生(Z世代)です。彼らに直接ヒアリングし、反応を見ることができます。
- 「生きたデータ」が取れる アンケートのような建前の言葉ではなく、実際に「どの席に座ったか」「何分滞在したか」「何を注文したか」というリアルな行動データを取得できます。
- バイアス(思い込み)がない 企業側の人間は、どうしても「コメダらしさ」に縛られます。しかし、学生たちはその制約がありません。「突然変異」のような新しいアイデアは、常に外部から生まれます。
役割分担の理想形
このプロジェクトの素晴らしい点は、企業と大学の役割分担が明確なことです。
- 企業(コメダ):資金とインフラ(店舗運営ノウハウ)を提供する。
- 大学(学生):感性とアイデア(次世代のニーズ)を提供する。
大人が頭を抱えて「若者の気持ち」を想像するよりも、実際に使う学生に「好きに作ってみて」と任せる。これこそが、最も解像度高く、スピーディーに「正解」にたどり着く方法です。 コメダ珈琲店は、自社のプライドや固定観念を脇に置き、「学生の感性を借りる」という戦略的決断を下したのです。
「わからない」と言えるリーダーが勝つ時代

権威よりも「素直さ」
この事例から、私たちビジネスパーソンが学ぶべき教訓は何でしょうか。 それは、「自分たちにはわからないことがある」と認める強さです。
どれだけ経験を積んだベテランでも、違う世代の感覚を完全に理解することは不可能です。 「最近の若者はわからない」と嘆くのではなく、あるいは「自分の若い頃はこうだった」と押し付けるのでもなく、「わからないから、教えてくれないか?」と素直に言えるかどうか。
これからの時代のリーダーシップとは、全ての答えを自分で持っていることではありません。 「自分にはない答えを持っている人(当事者や専門家)を見つけ、彼らと手を組む力」のことです。
組織の限界を突破する「産学連携」
もし皆さんの会社で、 「最近、ターゲット層と商品がズレてきた気がする」 「若手社員の離職が止まらないが、理由が本質的に理解できない」 「新規事業のアイデアが、社内の常識の範囲を出ない」 といった悩みがあるなら、それは「組織の同質化」が限界に来ているサインです。
そんな時こそ、外部の知性、特に大学や学生といった「異質な他者」を巻き込んでみてください。 コメダ珈琲店が学生に「くつろぎ」の定義を委ねたように、彼らはきっと、社内の人間では絶対に見つけられない「新しい正解」を提示してくれるはずです。
まとめ:その「施策」は、誰のためのものですか?
私たちはつい、供給側の論理で物事を考えがちです。 しかし、医療におけるQoLがそうであるように、サービスの価値を決めるのは常に「受け手」です。
自分たちの感覚を疑い、バイアスを外し、当事者と共に創る。 そのプロセスを経ることでしか、本当に人の心を動かすサービスは生まれません。
名城大学にオープンする新しいコメダ珈琲店。 そこには、大人の常識では測れない、しかし若者にとっては必然的な「新しい心地よさ」が広がっているはずです。 お近くの方は、ぜひその「次世代の感覚」を体感しに行ってみてください。
あなたのビジネスに「次世代の視点」と「確かなデータ」を
「若者の本当のニーズを知りたいが、社内にリソースがない」 「感覚的なアイデアを、データで裏付けして商品化したい」 「産学連携に興味はあるが、どう進めればいいかわからない」
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